香り豊かな小麦畑
香り豊かな小麦畑
きたほなみ
種まき・・・9月中旬~10月初旬
収穫・・・越冬して、翌年7月下旬~8月上旬
母:穂発芽に強い「きたもえ」
父:収穫量の多い「北系1660」
パウンドケーキ、クッキーなどの菓子に加工するとしっとりとしているのにホロリと軽やかな食感が楽しめます。製めん適性が高く、色がきれいなうどんになります。
思いでエピソード
北海道だけでなく日本の小麦の安定生産に欠かせない品種。ホクシンという前身の小麦から収量性、耐病性、製粉性、製めん性と文武両道小麦?という優等生は日本の至宝小麦。うどんでもよしですが、パウンドはしっとりホロホロとするお菓子にも使えて、さらに、パン用小麦のブレンドに使える二人三脚できる小麦。前田家ではクリスピーPIZZAにしてもサクサクして美味しいし、長女が誕生日ケーキを作るたびにしっとりとしたパウンドにチョコクリームをつけてくれてたり、家族のお祝いにかかせない品種がきたほなみです。
はるきらり
種まき・・・4月中旬
収穫・・・同年の8月下旬
母:(C9304×Katepwa)F1
父:穂発芽に強い「春のあけぼの」
作業性に優れ、捏ねるとすぐに滑らかな生地になります。あっさりとした味で、素材の味を生かせるので、菓子パンにも食事パンにも向きます。北海道内では耕作面積が少ないので、希少な品種です。
思いでエピソード
はるきらりっていう穂発芽にも病気にも強い春まき小麦がでるようだ?と農業試験場で聞き、十勝でも春小麦栽培を!と2009年~11年十勝春まき小麦PJがスタート。しかし、パン屋さんや食べる人はどう思うのか?そこでパン屋さん達に小麦畑に来てもらおう!と始まったのが、十勝ベーカリーキャンプ2009(現 北海道小麦キャンプ。春よ恋とはるきらりの隣畑でバケットの食べ比べを、帯広市のはるこまベーカリー栗原シェフにやいてもらい、皆で食べたのでした。パン屋さんと小麦畑をつないでくれた品種、それが“はるきらり”です。
キタノカオリ
種まき・・・9月中旬~10月初旬
収穫・・・越冬して翌年の8月上旬
母:耐冬性に優れ、収穫量の多い「ホロシリコムギ」
父:短桿、耐病性に優れた、ハンガリー品種「GK Szemes」
小麦の芳醇な香りにファンが多い品種です。クリーム色の粉色も魅力のひとつ。
モッチモチのパンが焼けます。また、ホームベーカリーでも美味しいパンが焼けます。
思いでエピソード
この小麦ないと困るんです!というパン屋さん達の声。プロ向け不動の人気を誇るのがキタノカオリかもしれません。収穫時期の雨に弱い、低温続くとパン生地たれしやすいといっても、小麦自体が美味しい!という品種。一番の思い出は2009年、収穫期に小雨だったにもかかわらず、明日じゃないて今助けないと、パン屋が困る(当時は売り先なかったんですが(;^_^A)とスタッフたちと小雨の中、ずぶ濡れでコンバインで収穫したこと。なんでも簡単にあきらめるな!と教えてくれたのキタノカオリちゃんでした。毎年、ドキドキさせられるおてんば小麦ちゃんです(笑)
春よ恋
種まき・・・4月中旬
収穫・・・同年の8月中旬~下旬
母:収穫量の多い「ハルユタカ」
父:良質性と耐病性に優れる「stoa」
しっかりと膨らみ、ふっくらモチモチのパンが焼けます。小麦の自然な甘みが魅力。
パン用粉の中では一番人気。また、ホームベーカリーでも美味しいパンが焼けます。
思いでエピソード
思いでの春よ恋は2004年産。初めて栽培してみよう!という私にに、父である社長の“大丈夫か、春小麦なんか?俺ははるゆたか“で3年のうち2年は穂発芽で収穫できなかった。”と疑心暗鬼で栽培し、その年収穫後に地元の満寿屋商店の杉山さん(現社長)がきて、原麦を粉にして食パンをやいてもってきてくれたこと。その時の春よ恋が“自分のところの小麦でもパンはできるんだ!”という発見と、家族で食べた初めての自家製(生産が)のパン。父も母も私も妻も、なんとも言えない不思議でうれしい顔だったのを覚えてます。まさに恋した小麦でした。
ゆめちから
種まき・・・9月中旬~10月初旬
収穫・・・越冬して、翌年7月下旬~8月上旬
母:「札系159号」と「KS831957」のF1
父:キタノカオリ
秋まき品種ですが、春まきのようなヒゲが付いており、収穫期には濃い黄金色に美しく色づきます。
タンパク質含量、製パン性が高く、ブレンドすることで、「きたほなみ」をパン用に転用することができ、国内産小麦の用途、消費拡大に寄与する注目の品種です。
思いでエピソード
ゆめちからの栽培は2008年。穂にひげ(のげ)があり、いかつく黄金色に輝く穂はめちゃくちゃ綺麗で、6月中旬~7月上旬までを私はゴールデンウィート期間と勝手に命名したくらい。この美しさを地元の人にもしってもらおうと2012年にミステリーサークル、2013年に24m大の巨大アンパンマンをゆめちからの畑に。さらに本別町111周年も記念して、日本一長い111mピザを400人で焼いて喜んでもらいました。農業は人を楽しませることができる、町つくりの一環が農業なんだなと気つかせてくれた品種、それが“ゆめちから”です。
美味しさのヒミツは土づくりにあります。
美味しい小麦を作るためには、
1.適地適作 気候風土が麦作りにあっている → 北海道・十勝にマッチしている
2.土づくり
3.スピーディな管理体制 適期播種、適期防除、適期収穫が可能な生産システム
活き活き土づくり、バランスの良い健康な土づくりの実践。
作物が栄養を吸収する土。植物はここから始まります。
でも、どうやって土を良くしていこうか?その答えが土の分析です。
当農場では、SRU(ソイル・リサーチ・ユニオン)土壌研究組合でその基礎実践をしています。全畑の土のサンプルをアメリカの研究機関で分析してもらい、川辺博士のアドバイスに基づき、土のバランスを考慮した、適正な肥料、メネラル補給を実施しています。
過去の過剰な化学肥料の蓄積や有機質によって崩れてしまった土も、活かされていない肥料分も健康で活き活きとした土になっていくのを毎年実感しています。必要量に応じたカルシウム、マグネシウム、カリや微量要素などの投入でバランスを整えていきます。
発酵した堆肥や緑肥の還元数値も土壌分析とともに行い、無理、無駄、環境にも配慮した施肥設計を行い、水はけの悪いところは暗渠(土中に排水管を通すこと)や明渠を作り、科学的に物理的にも、微生物の住み心地のよい土づくりに励んでいます。
開墾から100年あまり経った今、さらに100年持続する農業の実践が我々の使命です!!
1. 分析のチカラ〝100年先の農業へ〟過去を知ること、それは未来をみること。
前田農産では、土壌分析を実施して、一年間に投入する肥料の量や質を計画し、実施しています。
土壌研究グループSRU(ソイル・リサーチ・ユニオン 土壌研究組合)のメンバーです。
SRUを通して、各畑の土のサンプルを川辺博士に送り、土壌の成分のバランスを分析してもらいます。
そのデータを元に、今までの肥料の配合に無駄はないか、無理はないかをチェックし、計画を立てます。また、その課程をデータとして後の世代への財産として蓄積させます。
「農業は天気商売だ」と言いますが、天気は天に任せるしかありません。「雨が多く降る年は肥料分も流出するだろう」などと先人の経験をも踏まえて、実際の施肥を行います。
先人達の土への"勘"や"経験"を科学し、バランスがとれた健康な土で、活き活きした作物を育てます。
長年の経験を積んだ人の勘というのは、多くの場合正く、農業においても例外ではありません。ただ、100年先も日本の農業を残すためには、このデータの積み重ねと〝分析力〟が大きな支えとなると考えています。
2.堆肥のチカラ〝循環型農業〟
麦稈ロールは、小麦の収穫後に残った、麦の稈、麦わらです。
前田農産では、この「麦稈ロール」と畜産農家の「堆肥」と交換して、土作りをしています。
堆肥の播き方
堆肥はこんな風に畑に播いていきます。
化学肥料の使用料を抑え、地球にも優しく、作物の育ちやすい土壌になります。
ゆっくりと肥料分が効いてくるので、効果があるのは、1~2年後から。
100年先の農業を、土作りを考えています。
畜産農家からやってきた堆肥を、混ぜることで空気を入れて発酵を促して、完熟させます。
温度は60度以上が理想的。
気温の高い日を選び、半年に2~3回混ぜます。
畑に堆肥を運び散布します。
作業機(マニアスプレッダー)という、専用の堆肥散布機を利用して堆肥を播きます。
タイヤショベルで10tもの堆肥を積み入れ、畑1ヘクタール当りに30~40tの堆肥を播きます。
発酵が進み、完熟しているので、香りは・・・それほどでもありません^^
マニアアスプレッダーは、後ろの出口にビーターと呼ばれる羽が回転し、撹拌しながら堆肥を飛散させながらまきます。スカベンジャーは、横のシャッターから高速回転で堆肥を飛ばします。その距離なんと30m以上!すごい迫力です。
3. 緑肥のチカラ〝Dr.エン麦〟
前田農産では後作緑肥を導入しています。
8月の小麦の収穫後に〝エン麦〟(シリアルによく入っているもの)という麦の一種を〝緑肥〟としてまきます。
文字通りエン麦は有機肥料、機能的作物としての役目を果たします。
約2ヶ月間栽培して10月下旬に土にすき込んでしまいます。
「収穫しないで土に混ぜ込んでしまうなんて、もったいない!」と思うかもしれませんね。
土壌病害のクリーニング作物の代表格がエン麦なのです。
緑肥には、その他、アカクローバ、ヒエワリ、カラシナ、ライムギ、トウモロコシと用途に合った作物があります。
このエン麦、通称〝Dr.エン麦〟にはどういう働きがあるかというと・・・
1.土壌の病原菌や有害線虫が減少させる。
2.有機物、肥料成分の補給
3.土に団粒構造を作り、保水力、保肥力UP、通気性、通水性UP
と良いこと尽くめ。
自然の力を借りて作物の病気を予防したり、高品質な肥料分を頂くのです。
緑肥の播き方
スムーズに進めば作業手順はこのような感じ。
8月小麦の収穫後に、肥料と共にエン麦の種をまきます。
この時に作業機(ディスク)で小麦の残った根を土からはがし、分解を促します。
種まきから1週間ほどすると、芽が出揃います。小麦とそっくり!
10月、丈が1メートルにも伸びています。
小麦畑の様です。
まず作業機(チョッパー)で上部を刈り取り、切り刻み、微生物たちに分解や発酵しやすい状態にします。
次に作業機(ディスク)で根を土から切り離して、一緒にすき込みます。
あとは、太陽の光と雨の恵みにおまかせして、団粒構造のフカフカの土になっています。